ところで、過積載って何?過積載の利点と欠点は?
過積載(かせきさい)は貨物自動車などに積載重量を超えて貨物を積んで走ること。法律違反であり、事故発生時には因果関係責任を問われ、また道路路面や道路構造を破壊し、通る道路の周辺に地震並みの震動による交通公害を撒き散らす犯罪。Wikipediaより引用
当然、運送会社はトラックの台数が少なければ少ないほど利益が出る。運ぶ荷物は可能な限りたくさん積みたい。
ところが、これが事故の原因になるケースが多い。過積載はブレーキ性能の低下や荷崩れを招き、重大事故を誘発する。また、道路や橋など、道路施設の損傷の一因である。
実は、次の物理の公式から計算すると、制動距離は積載量に依存しない。
1/2mv^2(最初) - 1/2mv^2(最後) = mμgSsinβニュートンの運動方程式から導かれる。仕事と運度エネルギーの関係式だ。この公式は m = 車両の質量 を消去でき、実際にそうして計算される。しかしこの計算には、過積載による車両(タイヤなど)への負担が考慮されていない。
m:質量 v:速度 μ:タイヤの摩擦係数 g:重力加速度 S:滑り距離 β:横滑り角
"滑り前後における車両の運動エネルギーの減少が、タイヤの滑りによる消費エネルギーに等しい"江守一郎著 実用自動車事故工学
愛知県豊川市の運送業者李鶴龍(48歳)が従業員のトレーラー運転手(31歳)に最大積載量35トンの車両にコイル状のステンレス鋼板四個、合計重量37トンを積んでの運行を強要、2トンの過積載が原因で同トラックは東名高速道路の静岡県由比町の下り線で前輪がパンク(96年8月26日)、荷台のステンレ鋼板コイルが国道1号線に落下、これが原因で6人が死亡する事故が発生した。運送業者は過積載強要の常習などで静岡簡易裁判所に略式起訴、同裁判所は罰金50万円の略式命令を96年11月13日に出した。
同事件を担当した遠藤英じ静岡地検次席検事は「業者の慢性的な違反が大事故の原因になった。大事故を起こしたために出た処分。普通なら検察が手掛けない違反」と述べ、東名高速道路で過積載のトレーラーが事実上野放しになっていることに対する警察の怠慢をも指摘、取り締まりの強化を求めている。
死者六人を出したこの過積載を原因とする大事故が引き金となって運送業者、運転手双方から過積載撲滅の悲痛な声があがるようになっている。
この事故にも見られるように、過負荷がかかればタイヤはパンクし、事故になる。制動距離の問題ではないのだ。
今回の「国会前に土砂」事件は、過積載に対し厳しい姿勢で臨みたい国に対し、現場でしわ寄せを受ける労働者から送られたメッセージのようだ。
運送会社や運転される方は、運送に関するプロであるはずである。過積載がいかに危険かについても、人に説明できる程に知っておくべきだ。ところがこの有様。私見も混じるが、これでいいのか甚だ疑問である。
補記:記事中で引用した計算式に対して、「捜査官のための交通事故解析」25頁 に、滑り距離 S = (W+Wred)/2(WμR+Pr/R)g とあるようです。詳しい内容は不明。