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コンセントで充電し走行できるこの電気自動車の販売元「オートイーブィジャパン株式会社」に次の質問を送った。
@バッテリーの寿命(交換目安年月)はどれくらいか。
Aその際の費用はいくらか。
01月29日に返事が届いた。その内容をスタッフによる調査結果も含め検討する。
まず個人情報を除くメール全文は以下のとおり。
差出人 : Girasole Customer Service計算は自分でやれとのことなので、以下に算出してみた。その際、電池の充電回数などにいささか疑問を感じたので、こちらで独自に調査した値も使って比較計算も試みた。
送信日時 : 2007年1月29日 16:06:02
件名 : RE: Girasole Web お問い合わせ
お問合せありがとうございます。
@搭載のリチウムイオンバッテリーは、バッテリーの充電率により2000〜3000回の充電が可能で、ジラソーレは一充電で最大120km走行します。
バッテリー寿命は、お客様の走行条件、走行距離によって異なりますので、上記数値から推計していただけますと幸いです。
A良好な走行条件を前提としますと、毎日充電が必要な場合でも5年程度はバッテリー交換不要と考えられますので、交換費用は公表しておりません。
なお、オプションとしてのリチウムイオンバッテリーの予定価格は1個当たり8〜10万円の予定です。ジラソーレは14個を搭載しております。
以上、取り急ぎご返信申し上げます。
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お客様相談室
オートイーブィジャパン株式会社
〒145-0075 東京都大田区西嶺町9−6
久が原台スカイマンション1階
TEL:03−5732−3378
FAX:03−5732−3379
URL: http://auto-ev-japan.com
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メールの内容を鵜呑みすると
まず、2000〜3000回充電可能で1回あたり最大120km走行することから、充電電池の寿命は24万km〜36万kmということになる。併せて5年は使用可能とも書かれている。
様々な乗り方が考えられるが、ジラソーレで5年間に20万kmを越えることはおそらくないだろう。つまりジラソーレの電池寿命は推計5年ということになる。
次に交換費用だが、8〜10万円が14個なので1回の電池交換に推計112〜140万円+工賃がかる計算だ。新品の本体価格が260万円なので、価格の半分が"電池代"ということになる。
つまりこの電気自動車"ジラソーレ"は5年に1度、最低でも推計112万円がかかる計算だ。
さて。ここまでで"?"が浮かんだ方がおられるはず。携帯電話にもノートパソコンにもリチウムイオンバッテリーが搭載されており、その使用感から気付くことがある。充電電池が本来の性能のまま5年も持つことなど考えられないのだ。
ジラソーレは(販売元Webサイトによれば)リチウムイオンバッテリーを搭載している。リチウムイオンバッテリーは従来の二次電池に比べ性能が優れている。とはいえ、充電回数に伴いフル充電時の容量は減少してゆく。リチウムイオンバッテリーについて調べてみた結果を紹介する。忙しい方、興味のない方は読み飛ばすことを推奨する。
・100%の残量近辺で充放電を繰り返すと劣化を早める。では以上のことから、ジラソーレ含む電気自動車に考えられそうなことを挙げる。
・1ヵ月に1度は使用したほうがよい。
・低温環境下では一時的に性能が低下する場合がある。
・電力を大量に消費するとき発熱する場合がある。
・メモリー効果がみられない。
・どのような継ぎ足し充電を行ってもよい。
・低充電量(30%以下)・低温(15℃以下)であれば1年保存でも数%の容量劣化。
・満充電・45℃で保存すると半年でも60%程度まで容量レベルが劣化する場合あり。
・高温・高充電率の場合劣化しやすい。
・高温時は自己放電が進みやすい。
・容量は300サイクルで約70〜80%、500サイクルで約70〜50%まで劣化する。
上記は1セルの場合である。複数セルのバッテリーは1セルの時には見られない"セルバランス"という要素が加わり、メモリー効果様の症状がみられる場合がある。
・セルバランス・・・自己放電速度の揃ったセルを使って複数セルのバッテリーを作ること。詳しく説明すると、セル一つ一つには安全の為に「これ以上放電しない・これ以上充電しない」という具合に充電量を管理する保護回路が組み込まれている。一方、セルは個々に自己放電速度が違う。直列では、自己放電速度の遅いセルが他より早く充電が終わる。残りのセルは途中まで充電され、全体としては充電終了となる。これを使用すれば当然最後まで放電せずに終了となるセルが出てくる。
・セルアンバランス・・・上記参照。これによる症状は、原理は違うが使用感としてはメモリー効果に似ている。
※継ぎ足し充電・・・充電電池を最後まで使い切らずに充電すること。また「どのような継ぎ足し充電」という言い回しには、フル充電にせず途中で充電を止める行為なども含まれるだろう。
※セル・・・バッテリの内部はいくつかの小さい充電電池が直列または並列になっている。セルはその小さい充電電池一つ一つをさす。
※サイクル・・・充電→待機→放電の1セットを指す。
※メモリー効果・・・ニッカド充電池やニッケル水素充電池にみられた、継ぎ足し充電による容量低下。電池内部の化学変化により起こる。
・自動車は通常屋外か車庫に保存される。夏季などは高温条件下になることが予想される。従ってバッテリーも夏季は特に高温下で保存されやすい。
・自動車は必要なとき、思い立ったときに走行できることが重要。途中で走行できなくなるリスクや突然の用事に備えることを考えると、常にフル充電が望ましい。電池切れまで走行することなど殆どないだろう。
・高電圧、大容量を要する電気自動車は複数セルのバッテリーを使用している。
これらのことから、電気自動車のバッテリーはフル充電かつ高温下で保存されることが珍しくなく、特に夏季は劣化が進むと考えて間違いない。リチウムイオンバッテリーのセルメーカーが「300〜500サイクルで容量が半分にまで低下する」としているのも見逃せない。
メールでは2000〜3000回の充電が可能としているが、彼等の言う「充電」は継ぎ足し充電も含めるのだろう。最初の計算ではフル充電2000〜3000回として計算したが、実際は300〜500回で性能低下が顕著となる可能性がある。
また、寿命は5年とはいえ、経年劣化によりフル充電しても以前より走行可能距離が少ない、といった症状に見舞われるのは間違いなさそうだ。
さらに、フル充電で最大120kmという航続距離は40kmで定地走行をした場合であり、実際の使用において何キロ走るかは不明である。ここに電池の経年劣化が絡むのだから、最大120kmという数字は忘れたほうがよさそうだ。
販売元が言う"電池寿命の5年"を待たずして電池交換(推計112万円以上)を要する確率は決して低くないだろう。ここにモーターの故障率なども考え始めると・・・
筆者は貧乏人なのだろうか。
参考:
「ベイサン:リチウムイオン電池の基礎」(非常に詳しい)
http://www.baysun.net/lithium/lithium11.html
「リチウムイオンバッテリー考(高崎真哉さんのHP、利用者の心理に忠実かつ誠実)
http://dennou.stakasaki.net/xiedai03_battery-j.html
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コメント有難うございます!
なるほど下取りという手がありましたか・・。
確かに貸し駐車場の場合って電源ない場合が多いのでなかなか厳しいかもしれません。
参考になります!ありがとうございます!
・Gownerさん
乗られたんですか?!! 羨ましい・・。
150km進めればちょっと都心←→郊外ぐらいなら簡単に行けますね!しかし渋滞の道で走ったなんて・・・結構ヒヤヒヤもんだったでしょう(^^;
お二方のコメントに共通して見られる「ステータス」という甘い響きにウットリしながらも・・コメント有難うございました!